投稿

6月, 2019の投稿を表示しています

M44-7を鳴らせるアンプ

たぶん、現行の市販品には存在しないと思います。 SHURE社が公開している技術仕様は400〜500pFの47kΩで、出力は時代によって9mV〜11mVです。残念ながら市販品は400pFまでしかフォローしていませんが、聴感で調整した限りでは450pFでジャストでした。また、かなり高出力ですのでどうしても吐き出す電圧がプリの至適入力を超える傾向があります。ロードラインがずれてしまうのです。 樽型特性の補正は負荷入力だけではダメで、RIAAの定数を少し触る必要があるかもしれません。もちろん、そのままの特性を本来の味わい、としてもよいのですが、高域側のピークを少し抑え、低域側をわずかに持ち上げると滋味豊かな代物に化けます。元の声紋が「印象的」なのです。 C22の二重補正をいじってもいいですし、マランツ7のトーンコントロール回路(EQのRIAA特性をいじるのと原理的には一緒です)をいじってもいいでしょう。残念ながらマランツ7の11段のトーンコントロールでは数値がドンピシャではないので間を聴感で拾う必要があります。さすがに同時代の製品なので入力オーバーはないです。 イコライジングと針圧を丁寧に合わせると、濁りのないピアノとベースの胴の鳴音とシンバルやサックスの金属音と、どれも「印象的」な響きがでます。 そういうアンプがないために、地味な誤った評価しか受けられないのでしょう。自作される方は挑戦する値打ちがあると思います。本物のSHUREサウンドはやはり鮮烈です。

M44-7のバリエーション

SHURE社のホームページにも記述がないのであまり確実ではありませんが。 手持ちのM44-7で最初期型と思われるモデルは白色ボディ・白色針。いずれもシルバーのプレートが付いています。おそらく1960年台の製品でしょう。 中期型と思われるモデルは茶色ボディ。1970年台の製品でしょう。 後期型は黒のボディ。カモメマーク付きと無しがありますが、どちらも同じ音色なのでここから構造が変わったと思われます。 音色的には年代ごとに特徴が違います。 最初期の白色カモメは低音に独特の響き感があります。サックスやシンバルの鮮烈さはTYPEIII以上なのですが、この独特の響き感が背景にあるため、よりJAZZ的なコントラストが鮮烈になる傾向があります。JAZZの名盤が次々にリリースされた時代なので売れたのも納得です。 クラシックには合わない、というご意見もあるようですがドビュッシーだけは例外で。 曖昧模糊とした低音の中に時折煌めく曲の作りがこのカートリッジのキャラクターととても良く合います。ラヴェルも良いですね。ただ、交響曲に対する分解能や、弦楽器の艶描写などクラシックに対する万能性という点ではSPUの方がやはり圧倒的に格上です。 最初期型はメーカー公称の周波数帯域が20kHzまであって、17kHzの後期型とは仕様が少し違うのかも知れません。 後期型の黒色モデルはカモメマークのあるなしに関係なく、同じサウンドです。カモメマークの有無より針のコンディションの方が差異は大きく出ますので中古を探される際はその辺は注意されたら良いでしょう。JICOの針は個人的にはテイストを含めてとても良いと思います。後期型ですとオリジナルに拘る意味はあまりないでしょう。 典型的な樽型特性なのですが、中域の歌いっぷりが捌けた感じで特にボーカルがぐっと前に出てきます。同時代のロックの名盤をかけると、溢れるほどの力感があって、あの時代に引き戻されます。こちらはクラシックは無理だと感じます。JAZZはウッドベースの響きがやや物足りなく感じますがドラムはよく切れますね。 初期型はJAZZの時代。 後期型はロックの時代。 そう考えるとなるほどよく出来ているな、と感心します。 HIPHOPやDJプレイで人気が出たのは後期型の音色でしょうね。確かに、マジックで力強く描いたよ

M44-7

プリアンプを作成しました。12AX7の6本構成。MM用のEQを内蔵。セレクター類で手持ち機材いろいろ接続できるように。 EQの負荷容量をカートリッジごとに最適化しているのですが、ほんの30pFでも違いが分かるので手が抜けません。 最初にPHONOケーブルを低容量のシールド線にして全てを2pFくらいに揃えます。差し替えごとにぐらつくと面倒ですし。 SHURE社のデータによるとTYPEIIIで400〜500pF IVだと200〜300pF M44シリーズは450pF位のようです。 RIAAカーブを計測しても良かったのですが、売り物でもないので自分の耳で好きなように聴感で調整。トーンアーム3本のターンテーブルでカートリッジを切り替えながら。 60年代のJAZZでパチパチ切り替えながら聴いているうちに、再び古いM44-7がじんわりと染みてきて。SPUとこれはいつの間にか使いやすい手前側に移動です。 未調整だと中域の持ち上がった典型的な樽型特性ですが、鳴りっぷりが妙に鮮やかで。 これを調整したらどうなるかな?と入力負荷とEQのNFBとメインアンプに組み込んであるローパスフィルターの定数をあれやこれやいじってみると、打楽器もベースもきちんと出るのにサックスの音色が埋没しない、ちょうどいい塩梅が見つかりました。 アナログの機材には「声紋」みたいなものがあると思います。帯域ごとの音量では説明のつかない音の癖、みたいなものが。 M44-7は、この音の癖がとてもいい。 もちろん、癖があるのですから原音再生を目指すハイエンドとはまるで違う世界になっちゃうのですが、休息のための遊びなんで、そういうのが正解と思っています。 SPUの癖。M44-7の癖。 食べ物の好みみたいなもんですが毎日聴くならこの2つが良いですね。 SPUは1957年発売で私のモデルは1960年代のもののようです。M44-7は1964年発売で私のモデルは68年製のようです。 SPUは押しも押されぬ名器ですが、M44-7はあえてアナログで聴く場合、いかにもそれらしい時代の音色という点では他のHiFiとは別格と感じます。 これを全部書き終わってから、M44-7がディスコンになっており、それどころかSHURE社がカート